総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「燐とのことだが」
「はい」
「一度だけ聞く」
「……?」
「渋谷で助けてもらったってのは、単なる偶然か?」
総長さんの質問の意図がわからない。
わからないけど。
……さっきまでと声色が変わった。
「俺はお前を面倒みると決めた。だが、もし燐との出逢いが仕組まれたものなら話は違ってくる」
「……!」
それって。
わたしがスパイかもしれないって言いたいの?
燐さんを利用して故意に近づいて
チームに危害を加えようとしてるって
そういうことですか?
「俺たちを騙しているのだとしたら。そのときは女だからといって容赦しない」
――総長さんは、わたしを疑ってるの?
「後ろめたいことをしていると思うなら、すぐにこの街を出ていけ。そして二度と、あいつらに近づくな」
初めて会ったわけで。
信用なんて、ゼロで。
それでも、
総長さんから疑いを向けられるのは、悲しいよ――。
「違うっ……」
仕組まれてなんてないよ。
燐さんとの出逢いは偶然だ。
「だったら示せ」
真っ黒な瞳に吸い込まれてしまいそう。
わたしは、このひとに
どうやって身の潔白を証明すればいいのだろう。
信頼って、どうやって築くのだろう。
わからない。
……ひとりぼっちだから。
「燐さんに助けてもらったことは本当に感謝しています。それに、ここに連れてきてもらったことも。総長さんたちと会えたことも、嬉しいんです。ただ、偶然……なのかは……」