総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「本当にそれだけでいいのか?」
「……はい」
「他に欲しいものがあれば、遠慮せずに頼め」
「こんな時間に食べるって、悪いことしてる気分になります」
「なにを今更。悪いことならもうしているだろう」
「……!」
そう、だよね。
わたしはもう――。
「俺といるってことは。いい子ではいられなくなるということだ」
――ずっと、“いい子”にしてきた。
夜の外出はおろか
門限を破ったことは一度たりともない。
ただ、与えられた“役目”をこなしてきた。
総長さんといると、
ここが現実なのかわからなくなりそうになる。
生活が、180度かわってしまったんだ。
「引き返したくなったか」
「え……」
「悪い夢を見たことにして全部なかったことにしたいか?」
今日の、この出来事を
なかったことに――?
【こいつは俺のだ】
これが、悪い夢?
まさか。
ここは、おとぎ話のような世界です。
「……イヤです」
なかったことにしたくない、です。
「当たり前だ」
「……!」
「やっぱり帰るなんて言っても、帰すつもり微塵もない。どんな手を使っても俺から離れたくないと言わせてやろう」
「どうして……」
「手放すのが惜しい。それだけの話だが、そんな風に思ったのは初めてなものでな。まだ自分でも戸惑っている」