総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「強いのに狙われるんですか」
「プライドかけてるやつもいれば。単に勝ってでけえ顔したいやつもいるだろーな」
中には姑息な手を使ってでも幻を蹴落としたいタチの悪い輩もいる、ということは今言うとこの子の不安を余計に煽りそうだからやめておくか。
「そんな……それで、傷つけ合うの?」
俺には君のいた世界がどんなものだったかなんて、知らない。
だけど俺たちの世界は綺麗でもなんでもない。
怖いならはやいとこ元の暮らしに戻ればいいと言ってやりたいが。
……もう、幻が逃さないだろうな。
それに、君は覚悟を決めていた。
【家には……! 帰りません】
余程戻りたくないような事情があるようだった。
「幻には弱みがない。仲間の為に身体張るところはあるが、どいつもそう簡単にはヤラれねえ。ヤラれたとして、幻からの報復を恐れないやつはいないだろうから下手に攻撃は仕掛けてこない。燐のバカもああ見えてキレると手がつけられないイカれ野郎だから心配いらない。だが、夕烏ちゃん。君は違う」
「……!」
「ここまで言えばもうわかるよな。君は、幻の最大の弱点となる。ほぼ確実に……狙われることになるだろう」
「それって……わたしがいることで……みんなの足手まといになるってことですか。わたしのせいで総長さんに危険が及ぶってことですか?」
「それは……」
少女から、視線を外す。
「なにも君が足手まといとは言ってない」
「でも。そういことなんですよね」
そうさ。
だから、そういう意味でも幻に女子を紹介するなんてあり得ないことだった。
なのに、あの燐《バカ》が――。
「愁。ベラベラ話しすぎだ」