総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「あれー。混ぜてもらおうと思ったのに」
いつもの場所――つまりオレたちのたまり場であるコンビニの駐車場に到着すると既に決着はついていた。
人で賑わう真夜中でも明るいネオンに包まれた街からバイクを数十分走らせると、星が空から降ってきそうな田舎町に着く。
本当にここが同じ東京だとは思えない。
アスファルト上に石ころみたいに転がっているオトコが、四人。
まさかたった四人で乗り込んできたの?
こっちは幻と愁のバイクしか停まっていない。
もしかして、相手は今なら勝てるとでも思って奇襲かけてきたのかな。
あは。
愁はともかく。
……幻相手に四人は無謀すぎるってば。
「来るなって言ったろ」呆れ顔の愁。
黒髪オールバック、長身のイカツイやつ。
こんなナリしてる愁だけど
――実は、進学校に通っている現役高校生だ。
それも学年トップの超優等生。
平日の明るい時間はメガネ、七三、学ラン。
今どきこんなやついないでしょって感じの絵に描いたようなガリ勉くんやってるんだから、ほんと笑っちゃうよ。
「顔出すなってことは、出して欲しいのかと思ってさ」
「相変わらずひねくれてやがんな」
「ホントはボクに会いたかったんでしょ、ツンデレなガリ勉くん。愛情の裏返しだよね。わかってるわかってるー」
「誰がツンデレだ。会いたいわけあるか。それにその呼び方やめろ」
「……あれ。このひと」
倒れているオトコの顔を見てつぶやく。
「燐の、知り合いなんだろ?」
「さあ。……誰かな」