総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)


少女を風呂場に案内し、リビングに戻ると幻がソファにかけていた。


「……燐は?」

「伝言。おやすみおにいたん、だとよ」

「誰がおにいたんだ……!」


パーティーするとか言って早々に消えやがった。

まだ始めてもねえってのに。


ほんと、嵐みたいなやつだな。


タバコに火をつけ、幻から離れて座る。


空気が妙に重い。

幻といて会話ゼロなんてザラにあるが、いつもと違ってこの静けさが心地悪いと感じるのは、互いに思うことがあるのに声を発しないからだろう。


先にこのシンとした空気を破ったのは幻だった。


「ブレーキがきかねえんだ」

「……あの子のことになるとか?」

「ああ」

「そんな感じだな」

「冷静に考えると、狂っているということに気づく」


肺まで深く吸い込んだ煙を吐き出す。


「別に。いいんじゃねーの」

「……なに?」

「つまるところ、理性ぶっ飛ぶ程大切なんだろ」

「…………」

「正直俺には幻の気持ちはわからねーし。女子が好きか嫌いかといえば、そりゃあ人並みには好きだが……誰か一人に固執したこともない。する機会がなかった。幻には、それがやってきたということなんだろう?」

「ああ。夕烏が大切だ」


< 91 / 258 >

この作品をシェア

pagetop