総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
少女を風呂場に案内し、リビングに戻ると幻がソファにかけていた。
「……燐は?」
「伝言。おやすみおにいたん、だとよ」
「誰がおにいたんだ……!」
パーティーするとか言って早々に消えやがった。
まだ始めてもねえってのに。
ほんと、嵐みたいなやつだな。
タバコに火をつけ、幻から離れて座る。
空気が妙に重い。
幻といて会話ゼロなんてザラにあるが、いつもと違ってこの静けさが心地悪いと感じるのは、互いに思うことがあるのに声を発しないからだろう。
先にこのシンとした空気を破ったのは幻だった。
「ブレーキがきかねえんだ」
「……あの子のことになるとか?」
「ああ」
「そんな感じだな」
「冷静に考えると、狂っているということに気づく」
肺まで深く吸い込んだ煙を吐き出す。
「別に。いいんじゃねーの」
「……なに?」
「つまるところ、理性ぶっ飛ぶ程大切なんだろ」
「…………」
「正直俺には幻の気持ちはわからねーし。女子が好きか嫌いかといえば、そりゃあ人並みには好きだが……誰か一人に固執したこともない。する機会がなかった。幻には、それがやってきたということなんだろう?」
「ああ。夕烏が大切だ」