総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
「……君も苦労してそうだな」
「え?」
「苦労せずに生きる方が難しいかもしれねーが、うちのチームにいる連中は苦労人が多くてな。クロムの周りには、やはりそういうのが集まるようだ」
「そうなんですね」
「あまり余計なこと言うと幻に叱られそうだから下手なこと言えねーけど。無理に明るく振る舞う必要もないと思う」
「……え?」
「俺たちの前では、笑いたいときに笑って、怒りたいときに怒って。気なんて使わずに好きに暴れればいいから」
って、俺はなにを言っているのだろう。
いきなり兄貴ヅラしてんのか?
言ったそばから恥ずかしくなってきた。
「お洗濯は朝になったらさせてもらいますね。このタオルや着てきた衣服、まとめて洗っちゃいます。よければ愁さんのも」
「ああ……それじゃあ、お願いしよう」
――思い出した。
君が着ていたセーラー服。
あれは、かなりのお嬢様校だ。
たしか通っている者は皆金持ちで、中高一貫のはずだ。
なのに、家出するのもそうだが。
身の回りのことか自分でできるのは、いささか奇妙だ。
15のお嬢様が家事なんてこなすか?
……幻にも自身のことは話していないようだった。