能力の純覚醒
すぐにマリアがイリスの前に連れてこられた。その顔は青ざめていた。まるで、不意に人を殺めたような顔だった。

「ヨミエル。遅い。早くこの者達の能力を封じ込めなさい」

奥から二つの腕輪のようなものを持ったヨミエル・ラエサミリースが姿をあらわした。

「私は、ヨミエル・ラエサミリース。『全ての能力を一時的に封じ込める能力』よ。一時的にだから時間をかけないで」

三人の中では一番人間らしい印象の少女だった。しかし、二人のように話終えるとすぐに作業に取りかかってしまう。

無抵抗の二人は。腕輪をつけられ、ドサエルミーヤ家の者に連れていかれた。

城を出て、町を抜け、森に入り、山を二つ越え国の果てに、時空の歪みのような者が見えると、ドサエルミーヤのものは、掴んでいた手を離し、二人をその奥へと入れた。

「この結界は王家の魔術師によって精製された能力を封じ込めるための結界だ。お前達の能力はここから国の方へ影響がでない」

そうだけ告げると、ドサエルミーヤのものはすぐ王宮へと、戻っていった。

「イリス…。どうしよう。私、フリアネ・ドサエルミーヤを殺しちゃった。能力を使ったら…私…わざとじゃ…ない…の…に」

途切れ途切れの言葉でマリアはイリスに起こったことを伝えた。イリスは泣き出したマリアにどんな言葉をかけて良いかわからず、そっと抱き締めた。

しばらくして、マリアが泣き止むと、イリスはこの結界を観察した。触り、出ることのできないことを確認し、独学で学んでいた魔術で測定をした。

「マリア、この結界、奥にずっと続いている。もしかしたら人がいるかも」

焼き払うことが不可能だとわかると、イリスはマリアに測定結果を報告した。とてもイリスには破れるものじゃなかった。

「待って…いまは、もう少し、二人でいたい」

マリアは少し前に起こったばかりの想定がいすぎる出来事で、悲しんで、正気でいようとしてもかなり弱っていた。そんなマリアを見てイリスは、マリアを少し抱き締めて尋ねた。

「どれくらい?」

「あと…五分…」

そう聞いたイリスは、五分間ずっと無言で抱き締めていた。妹であるイリスは、双子でもマリアに甘えることがもともとあった。

しかし、マリアから甘えてくることはなく、新鮮なのもあり、少し笑顔で抱き締めていた。姉であるマリアは、双子でも姉の自覚を持ち、イリスの事を守ろうとし、甘えなかった。たった今、人生で初めて甘えていた。
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