イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「もしかして知恵熱というものでしょうか。頭を使う頻度の少ない方に現れるという……」

「ち……!」

 叫びかけた声を、アディはようよう飲み込んだ。やはりルースは面白がっている。

「では、アデライード様には、こちらの分を」

 すました顔で、ルースはアディに分厚い『課題』を渡す。

「あの……私の分だけ多くないですか?」

 もちろん、エレオノーラにもポーレットにも同じように課題は出されているが、あきらかにアディの分とは厚さが違う。

「おや、何故だかおわかりになりませんか? でしたら、おわかりになるように誠心誠意、ご説明いたしましょうか」

「いえ、結構です……」

 アディは涼し気に微笑んだルースから、しぶしぶ課題を受け取った。

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