イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
今ではすっかり気楽に話しかけるようになったアディだが、最初はかなりおそるおそる声をかけた。けれど、相手の様子をうかがっていたのは三人とも同じだったようで、仲良く打ち解ける、とまではいかなくても、一緒にいるときはそれなりに会話が続くようになった。

 それに、彼女たちが通常のパーティーで囁かれるようなゴシップや噂話を一切しないというところも、アディは気に入っていた。

 王宮内での滞在中、三人が集まるのは講義やレッスンのときだけだ。食事も各自室でとるために、アディは王宮内で他の二人に会うことはなかった。

「むしろ、あなたはなぜその歳になるまでなにも覚えずに来たのか、そちらの方が不思議ね。一応領地を持つ伯爵家の一員でしょう? その首の上にある丸いものはできの悪い飾りなのかしら」

 返事をしてくれるのは嬉しいが、エレオノーラの言葉の容赦なさはルースに匹敵する。アディは、さらにくじけそうになった。

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