イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「かなわねえなあ、アディには。いい嫁さんになるぜ」

 言いながら店主は、アディの持っていた網かごにかぶをいれ、ついでにスーキーの網かごにはおまけのたまねぎを入れてくれた。

「ありがとう、おじさん。またね」

「ああ。来週にはキャベツも安くなるだろうから、また買いに来な!」

「そうするわ」

 アディもキャベツは大好物だ。

「よかったですね、お嬢様。今日は得しちゃいました」

 二人が浮かれた気分で店を後にすると、今度は雑貨屋の親父が気づいて声をかけてくる。

「よう、アディ。まだ油は足りているかい?」

「おかげさまで」

 笑顔で答えたアディに、親父はあたりをうかがうように声をひそめた。
< 12 / 302 >

この作品をシェア

pagetop