イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「夏になったら値が上がりそうだから、今のうちに少し多めに用意しとくといいぜ」

「あら、そうなの? 教えてくれてありがと、おじさん。じゃあ、明日にでも買いに来るわ」

「おう、待ってるぜ」

 その後も道々声をかけてくれる街の人々に応えながら、アディはスーキーと二人で帰路についた。

 朝の市で見事な値切りをしていく二人は、すっかり名物になっている。

「今日もいい買い物ができたわね。さあ、帰りましょう。今日はいい天気だし、畑仕事がはかどるわ」

「はい!」

 その時だった。

「てめえ、誰に向かってもの言ってやがる!」

 ばしんと大きな音と共に、大きなだみ声が聞こえた。二人が振り向くと、ガラの悪いごろつきがなにやらどなっている。
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