イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「お前には、関係ないだろう!」

 威勢よく返しているのは、鮮やかな金髪にきりりとした顔つきの、一目で貴族のお坊ちゃんとわかる少年だった。どうやら思い切り殴られたらしく片頬が赤くなっているが、びくともせずにりんと背筋を伸ばして男を睨みつけている。その胸には、なぜか紙袋を両手でしっかりと抱え込んでいた。

「うるせえ! さっさとその袋をよこしな!」

「誰がお前なんかに……!」

「ああそうかい、なら腕づくで奪うまでだ!」

 もともと少年の話など聞くつもりのない男が、ぶん、と拳を振り上げた時だった。

「スーキーは、そこらへんに隠れてて」

「お嬢様!?」
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