イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
ポーレットの親戚筋からすれば、アディは王太子妃候補のライバルだ。下世話な言い方だが、彼の王宮での立場を守りさらに強固にするために、姪であるポーレットが王太子妃となることを全力で応援しているに違いない。アディは、彼にとってただの邪魔者だ。

「こちらこそ、ごめんなさい。アデライードに対してあんな態度……悪い人ではないのよ」

 申し訳なさそうに言ったポーレットに、アディは笑顔で首を振る。

「気にしてないわ。あの方の気持ちもわかるもの。それより、少し一緒に散歩をしない? 私、まだこの庭をちゃんと見たことがないのよ」

「まあ、素敵」

ポーレットは両手を合わせて、ふわりと顔をほころばせる。その表情は、まるで花のつぼみが開くように美しかった。
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