イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
彼女の美しさは、ただ顔かたちが美しいだけではない。穏やかでありながら芯の通った強さもうかがえ、さらに内面からにじみ出る色気も含んでいた。もう二十歳の大人なのだから、といえばそれまでだが、アディは、自分が二十歳になった時に彼女と同じ落ち着きを持てる自信はなかった。

「でも、ごめんなさいね。わたくしこれから、わたくしの侍女と午前中の講義の復習をする約束なの」

 本当に残念そうな顔で、ポーレットが言った。

「先のお約束があるなら仕方ないわね。ぜひまたご一緒しましょう」

「ええ、もちろん。そういえばわたくしたち、勉強ばかりで、こんな風にお顔を合わせることなどありませんでしたわね」

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