イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「では、あの言葉は本気ではなかったと……?」

「もちろん。誘ったのは、単なる遊び相手として、です」

 ぱしっ!

 アディの右手が、思い切りルースの頬を打った。ルースはよけることもしないで、アディの怒りをその身に受けた。

「わかりました。あなたに言われたことは、すべて忘れます。あなたも、今後はこのような不埒な振る舞いは決して誰にもしないでください」

「かしこまりました」

 アディの目に、涙が溢れた。

 なぜ涙が出るのか……アディは、もう自分の気持ちを自覚せざるを得なかった。
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