イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「それもそうですね。では、余計なことをもう一つ」

「なんですの?」

「キスの仕方です」

 目を丸くしたアディに、ルースはそっと顔を近づける。あわてて離れようとしたアディの腰を、ルースは強引に引いて抱きしめた。アディは、き、とその顔を睨む。

「今、不埒な行いはしないと言ったばかりでしょう? 過ちは犯さないのではなかったのですか?」

「そんな顔を私に見せたあなたが悪いのです。なに、黙っていればわかりませんよ」

「私は殿下に報告しますよ?!」

「他の男とキスしたことをですか?」

 ぐ、とアディは言葉につまる。言えるわけがないことをわかってそう言うから、この執事はたちが悪い。

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