イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
どうせ最初から政略結婚というのはわかっていたことだ。ただ、ここへ来た時と違うのは、あの時とは違う気持ちをアディが持ってしまった、それだけ。

 でも、それももう、他ならぬ本人によって結末を迎えてしまった。

「これで、よかったのよ…」

 アディが王太子妃、いずれは王妃となれば、ランディが継ぐモントクローゼス家も安泰だ。そしてそれこそが、アディの望みだった。

 だが。

 気持ちの整理をつけることができずにアディがぼんやりと窓の外を見ていると、こんこん、と扉をたたく音がした。

「はい」

 あわてて目元をぬぐって振り向いたアディは、はっと体を硬くする。

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