イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
部屋に入ってきてすばやく扉をしめたのは、執事の格好をした男だった。初めて見るその男の手には、短刀が握られている。

「誰っ……!」

 男は、何も言わずに間合いを詰めてくると、いきなりアディに向かって短刀を繰り出した。

「……!」

 突然の出来事に、アディの足がすくむ。目の間に突き出された刃を見て、とっさにアディはきつく目をつぶった。

(刺される!)

「アディ!」

 と、そんなアディを呼ぶ声、そして鈍く何かを打つ音、聞いたことない男の悲鳴が一瞬のうちに重なって聞こえた。

 ゆっくりアディが目をあけると、目の前には白い服を着た青年の後ろ姿があった。ふわりと金色の髪がなびく。
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