イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
青年は逃げようとする男を追ってその手を掴み、後ろ手にひねって、だん、と音を立てて床に倒した。

「怪我はないか?!」

 叫んで振り向いたその青年は。

「ルース……?」

 眼鏡をかけていないために見慣れない顔をしていたが、確かにそこにいるのはルースだ。だが彼は、いつもの執事の格好ではなく、白い正装をしていた。髪も、なでつけていないために、彼の動きにつれてふわふわと踊っている。

「テオ!」

 アディが驚いていると、窓の外から声がかかった。

「大丈夫!?」

 窓から、ひょい、と出てきた顔を見て、アディはまた驚く。

「フィル?!」
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