イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「気にするな。そこいらにいる連中は俺たちの様子に興味津々だぞ? せいぜい夫婦仲のいいところを見せつけてやればいい」

「そういうわけには……」

「そうですよ。新婚の王太子は、奥様にべたぼれで使い物にならないと陰口を叩かれたくなかったら、少しは自重してくださいませ、殿下」

 厳しく注意をしたのは、スーキーと一緒に控えていたマルセラだ。

 マルセラは、テオの乳母で、今はその侍女を務める女官だった。今はスーキー同様、アディの侍女としてそばに仕えている。

 アディが最初にテオに挨拶をした時に同じ部屋にいたのだが、薄暗い部屋でその顔まではよく見えず、後に会った時にもアディは全く気づかなかった。
< 286 / 302 >

この作品をシェア

pagetop