イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
その父が、アディが望まない結婚を断ってもいい、と言う気持ちは痛いほどわかる。だが、王宮から直々に王太子妃の話がきたとすると、うかつに断れば王宮での伯爵家としての地位や権力は地に落ちる。

 おそらくそんなことは父にもわかっているだろうが、それでも自分のことを慮ってくれる父の気持ちが、アディには嬉しかった。

 混乱していた頭が、すうっと冷えていく。アディは、にっこりと笑った。

「大丈夫よ。私を王太子妃になんて、光栄な話じゃない。王太子妃になれば、女官なんて目じゃないほど、この家を裕福にできるのよ? なにせ、王家がバックにつくんだもの、怖いものなしだわ!」

「お前……」
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