イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
ところが、ステップを踏み損ねて、アディの体が大きくかしいだ。どうやらまだ足がしびれていたらしい。

 なにせ馬車などめったに乗らないのだ。普段からこんなに長い時間おとなしく座っていることなどないアディの体は、かちこちに固まっていた。

 大勢の前で無様に転げ落ちる自分を想像しながら、アディはぎゅっと目をつぶった。

 と、その体が途中でふわりと止まる。アディが目を開けると、先ほど手を取ってくれていた執事がアディを抱き留めていた。

「大丈夫ですか?」

 落ち着いた声がアディの頭の上から落ちてくる。
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