イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
おそるおそる顔をあげると、黒縁のめがねの向こうにあるアイスブルーの瞳がアディを見つめていた。

 若い執事だった。濃い金髪をきっちりとなでつけた姿は、おそらく二十代半ばか後半くらいだろう。切れ長の目は、彼の有能さを物語るように知的な光を宿している。わずかに笑みを刻む薄い唇もきめの細かい頬も、あまり美醜にはこだわらないアディでさえ、美しいと思わされるほど整っていた。

(まあ。なんて素敵な執事さんなのかしら)

 アディはその瞳に吸い付けられたように目が離せなくなる。
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