イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「急いで跡継ぎを用意する必要があるなら、男爵令嬢かなあ」

「他の王太子妃候補の方ですか?」

「ええ。多産系の男爵令嬢と、堂々とした態度の公爵令嬢。私、一番だめかも」

 二人が話していると、ほとほとと扉をたたく音がした。はい、とスーキーが答えると、扉の向こうから落ち着いた声が聞こえた。

『アデライード様、お約束のお時間でございます。ご準備は整われているでしょうか』

「はい。お待ちくださいませ」

 聞いていたアディは、あわてて立ち上がる。時間を確認すると、ルースに言われた一刻がわずかにすぎていた。

「いけない! じゃ、スーキー、行ってくるわ」

「はい。お茶を用意してお待ちしてますね」

 アディはスーキーに言うと、扇で顔を隠して部屋を出た。そこで待っていたルースに軽く頭を下げると、彼について歩き出す。

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