イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「そのような浮ついた状態では、レッスンをする価値もありませんよ。仮にも王太子妃を目指す方が、そのような軽い心構えでは困りますね。あなたは遊びにここへきているわけではないはずです。以後、よくよく自重してください」

「はい……」

 扇を持つアディの手が、ぷるぷると震える。

なぜ、ほんの少し遅れただけでここまで言われなければいけないのだろう。もちろん、約束に遅れたアディが悪いことは重々承知している。だが、だからといってここまで言われなければいけない理由があるだろうか。

 先ほどのドレスの件といい、いちいちこの執事の言葉は気に障ってしょうがない。自分が王太子妃候補という立場でなければ、倍くらいは言い返してやるのだが。

 アディは悔し紛れに、前を行くルースの姿を後ろからにらみつける。

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