イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
身長に比べて小さい頭は、きっちりと撫でつけられて一筋の乱れもない。あの頭の中には嫌味しか詰まっていないのだろうか。

「何か、言いたいことでも?」

 前を向いたままいきなり言われて、想像の中でその頭を連打していたアディはぎくりとする。

(この人、背中にも目がついているの?!)

「それだけの気迫でにらまれれば、私でなくともわかりますよ」

 半分だけ振り返って、ルースはにやりと笑った。切れ長の目が、眼鏡の奥でなぜか面白そうに細められる。

「ああ、例外がこちらにいらっしゃいましたね。おそらくアデライード様では、どんなに強い気迫で見つめられても気づかれないでしょうから」

「……!」
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