ホットホットドリンク
「あ……中西くん、だよね」

学部が同じで女子がよく話している、というのが、中西に対する沙羅の最初の認識だった。

「おう。南野さんだよね。大丈夫?」

「あ、大丈夫……ごめん、ありがとう」

足元を確保して、沙羅は中西から離れた。

女子にモテる彼は、話したことも数えるほどしかない自分の名前を知っていた。

その事実が、微かに心をくすぐっている。

中西は無言で階段を下りて、派手に散らばった書類を拾い集めている。

沙羅も慌てて回収した。

一番重たいダンボール箱をよく見てみると、底の部分が変形している。
< 13 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop