ホットホットドリンク
「あちゃー……」

歪んだダンボール箱を前に絶望的な気分になっていると、中西が歩み寄ってきて沙羅に集めたプリントを手渡した。

「あ、ありがと……」

沙羅のお礼の言葉は途中で止まる。

中西がそのまま、自然の流れで屈みこみ、ダンボールを抱えあげたからだ。

「え、中西くん、それは……」

「そんなやべえって顔しなくて大丈夫だろ。中身は多分無事だろうし。ダンボールは俺が運ぶよ」

「いや、そんな迷惑はかけられないよ。ただでさえ迷惑をかけちゃったのに」

「無理だろ、そんな細腕でこんな荷物運ぶなんて。今までよく持ててたな、俺でも重いぜ? どこまで?」

「隣の棟の教授の部屋まで……」

「遠っ」

軽い感じに呟いて、中西は歩き出す。

沙羅も慌ててプリントを抱え直し、追いかけた。
< 14 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop