ホットホットドリンク
ともあれ、七瀬も逃げるわけにはいかない。

「三上、お前、とりあえず怪我はないんだな?」

「打ち身くらい?」

「保健室行くか?」

「行かなーい。平気よ。ありがと」

「じゃあ片づけるぞ……」

「あらほらさっさー」

敬礼つきの元気な返事を聞いて、七瀬の眉間のしわは深くなるばかりなことに、三上はまるで気づかない。

いや、気づいていても興味がないのかもしれない。

「えーと、それで……なんでこうなった?」

机を起こしながら後ろにいる三上に問うてみる。

「んー。辞書見つけたけど、英語の辞書の上に他の辞書とか本とかあってさ。いけるかなーって思って引っこ抜いたんだけどいけなかった」

「おい」

「んで振ってきた本にびっくりして後ろ向きに歩いたら机にぶつかって、思わず手を出したら机倒れちゃった」

「あほ」

「で私もひっくり返って、だんごむし状態?」

「ばか」

「ごきぶりのほうが良かったかにゃ?」

「より悪い」

高校入学以来の付き合いではあるが、七瀬は未だに三上のことが分からない。

机と椅子を元の位置に直し、三上を見ると、教科書やらノートやらをすでに集め終わっていた。

「おおっ、いつになく仕事が早いじゃないか」

「自分のしでかしたことの後始末くらいできるのよー。七瀬に迷惑かけちゃってるしね」

……本当、分からない。良識があるんだかないんだか。

そんなこんなで、散乱した物を片づけ終わって時計を見ると、三十分が経過していた。
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