ホットホットドリンク
一つため息をついて、ひまりはまた問題を睨む。

大問3の3問目が厳しい。

「先生、ここからどうすればいいの?」

「因数分解したか?」

「した」

「グラフ書いて考えてみ」

「んー」

開け放った窓から吹いてくる初夏の風がひまりの頬と先生の髪を撫でる。

先生の黒いくせっ毛が一瞬浮いて、目にかかった。

先生は邪魔そうにそれをかきあげる。

男っぽい指が無造作に髪をかきあげる仕草が、やたらと色っぽくて、時が止まったようにひまりは感じた。

「……相川。視線。見すぎだ」

「先生かっこいい」

「……どうも」

「先生色っぽい」

「…………どうも」

「先生淫靡」

「それは認めない」

バチン、と先生はひまりにデコピンをかました。

「いったーいー」

「これだから文系は、余計な言葉を知ってんだから」

「文系関係ないじゃん」

ふん、と先生は窓の方を向く。柔らかく流れる風にされるがままに、髪が浮いては落ちてを繰り返している。

その様子を盗み見て、ひまりはテキストに視線を移した。これ以上見ていると先生に穴が空いてしまう。
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