溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
中華料理店を後にして会社に戻り、四階で先にエレベーターを降りて多恵と別れた。
いつものように軽くメイクを直してから戻ると、穂積課長はまだ社内にいないようだった。


「あ、青山さん。悪いんだけど、資料室からこれ取って来てくれる?」

「わかりました」


昼休みが終わるのと同時に営業部の同僚に渡されたメモには、必要なファイルがいくつか記載されていた。
最近はパソコンでデータを見られるものが多いけれど、それでも資料室のアナログデータも重宝されているから、こうして頼まれることは珍しくはない。


すぐに資料室に行くと、室内には人の気配がなかった。
いつもはだいたい誰かと会うけれど、昼休みが終わったばかりだからまだ足を運ぶ人がいないのかもしれない。


電気を点けると部屋は明るくなったけれど、棚に囲まれているせいで日当たりはよくない上、異様な静けさがある。
こんな場所にひとりでいるのは少しだけ心細くなってしまいそうで、早く資料を探し出そうとした。

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