溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
二日間とも健全なデートをしただけで、なにもなかった。

もちろんそれでいいし、むしろなんの問題もない。
間違っても穂積課長とのキスがよかったとか、課長とキスがしたいとか思ったりしていないんだから。


ただ、金曜日にキスをしてしまったくらいだから、心のどこかでは土日にもそれくらいのことはあるかもしれないと密かに構えていた私がいて。
何事もなく送ってもらったあとで、少しだけ腑に落ちないような気持ちになってしまった。

念のために言っておけば、その気持ちの中には〝残念〟なんて思いは絶対にこれっぽっちもないけれど……。


「……っ!? なっ、なにしてるんですか!?」


ひとりでグルグル悩んでいる間にすぐ目の前に穂積課長がいて、その顔があまりにも近くてまた後ずさりそうになったけれど、それよりも早く課長に手首を掴まれてしまった。
素肌と服の境目に触れる穂積課長の体温に、心臓が大きく跳ね上がる。


思わず視線を逸らして顔を背ければ、そのまま手首を持ち上げられたあと、「あぁ、これか」という言葉が耳に届いた。

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