溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「あ、あの……今のは別に……」


しどろもどろ零した言葉がますます気まずさを感じさせ、言い訳にもならない言い訳のせいで空気が重くなったような気がしたけれど、穂積課長は私から目を逸らさない。
今にも視線を泳がせてしまいそうな私は、まるで仕事でミスをした時のような気持ちを味わっていた。


「なんだ。まさか、キスされるとでも思ったのか」


フッと微笑まれて紡がれたキスという単語に、頬がカァッと熱を帯びた。

中学生でもあるまいし、そんな単語ひとつに過剰に反応するなんて……。
それでも、社内という空間で穂積課長の声で耳に届いたそれは、鼓動が跳ね上がるくらいの威力はあったのだ。


私の心の中を見透かされたことにも、どこか含みのあるような笑みにも、ドキドキさせられてしまう。
課長に恋をしているわけでもないのに、心臓は落ち着きを失くしていた。


「勘違いするなよ」


だけど次の瞬間、そんな私の鼓動を諫めるように、温度の低くなった声音が落とされた。