溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「そういえば、金曜って空いてる？」

「あー、今週は恭輔(きょうすけ)と約束してる。ごめんね」

「そっかぁ」


慌ただしく行き交う人の流れに乗っていた私は、多恵の返事にがっかりした。
申し訳なさそうな彼女に笑顔を見せたものの、落胆は顔に出ていたと思う。


オフィスに戻るまでのお喋りもランチを食べた時の楽しみのひとつだけれど、今日は思わずため息が零れてしまいそうになった。


「なにかあった？」

「ううん、ちょっと飲みたいなぁって思ってただけ。納期は木曜だし、金曜は定時で帰れそうだったから」

「じゃあ、近いうちに埋め合わせするよ」

「いいよいいよ。ただ飲みたかっただけだし」

「でも、私も莉緒と飲みたいし、来週にでも行こうよ」


本当にただ飲みたかっただけなのに、そんな風に言ってくれた。
納期明けに多恵と飲みに行けないのは残念だけれど、直近で予定を空けようとしてくれることが嬉しい。


笑顔で頷いた時には自社ビルの前に着き、エレベーターの中で彼女に別れを告げると、ひと足先に四階で降りた。