溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
昼食は、同じ複合施設にあるイタリアンに連れて行かれ、その時になって初めて予約してくれていたことを知った。


なにからなにまで至れり尽くせりで喜びを感じる反面、穂積課長のような素敵な人にそんなことをしてもらう価値が自分自身にあるとは思えなくて、申し訳ない気持ちにもなる。
パスタはとても美味しくてお腹は満たされたけれど、なんとなく心から満喫することはできなかった。


「莉緒、どうした?」


すると、課長はそんな私の雰囲気を察したのか、どこか心配そうな面持ちで私を見てきた。


「いえ、なんでもないです。すみません、少しぼんやりしてしまって」

「疲れたか? ここのところ、忙しかったから」

「そんなことないですよ」


忙しいというのなら、私なんかよりも穂積課長の方がずっとずっと大変なはず。
同じ部署で働いているのだから、それくらいはわかっている。


「アートギャラリーは楽しかったですし、ご飯も美味しくて幸せです」


だから、余計な気を遣わせたくなくて、満面の笑みを浮かべた。

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