溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
振り返った私の顔は、少しだけ微妙なものだったかもしれない。


だって、ほとんど無意識に零してしまった言葉を拾われたことも、そこにいたのが穂積課長だということにも驚いたから。
というよりも、恥ずかしいとか気まずいという表現の方がきっと正しい。


「独り言だったかな?」

「えっと……そんな感じです」


なんだか申し訳なさそうな横顔が小さな笑みを浮かべ、「聞かなかったことにするよ」と言われた。
それに苦笑する私に、課長は「そういえば」とランチの話を始めた。


「社食の夏野菜カレー食べた?」

「今年はまだですけど」

「そうなんだ。もうすぐ終わるみたいだし、食べた方がいいよ」

「噂では、去年より美味しいって」

「そうそう。今年のやつは辛さが控えめだけど、僕は好みだった」


うちの社員食堂は味もコスパも高いと言われていて、その中でもシーズンごとに変わるおすすめメニューが人気だ。
三ヶ月ほど前からは夏野菜カレーがメニューに加わっていて、毎年人気のそれは休憩に入るのが僅かに遅くなるだけで食べられないこともある。

< 15 / 380 >

この作品をシェア

pagetop