溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜
「私たちは、一献で鉢合わせたあの日まで、ただの上司と部下でした。私があんなことを言わなければ、恋人になることを提案したりなんてしませんでしたよね？」

「どうしてそう思う？」

「どうしてって……。だって、課長は私のことを恋愛対象として見ていませんでしたよね？　いくら恋愛経験が少なくても、それくらいのことはわかっているつもりです……」


自分自身の言葉に、胸の奥が締めつけられたような気がしたけれど……。
苦しくなった心には気づかない振りをして、拳をキュッと握った。


「じゃあ、逆に訊くが、莉緒は俺が遊びでこんな関係を提案したと思っているのか？」

「それは……」


つい言い淀んでしまったけれど、そんな風には思っていない。


穂積課長は遊びでこんな関係になるような人だとは思えないし、仮に遊びだったとしても同じ部署の部下を相手にするとは考えられない。
そんなに浅はかなことをするような人じゃないことは、上司としての課長を見てきただけで充分証明してくれると思うから。

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