溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「ひとまず、あちらでは百個はどうにかできるようだが……」


その言葉に、周囲が落胆したのがわかる。
私は、ますます不安とパニックになり、絶望すら感じそうになっていた。


イベントは来週の火曜日だから、三日はある。
だけど、今日はあいにくの金曜日で、基本的にカレンダー通りに動いている工場は、今日の夕方から月曜日の朝までは止まってしまう。


いくら交渉したって、工場の定時を迎えてしまった今、残りの四千四百をどうにかできるとは思えなかった。
その予想は当たったようで、電話で必死に交渉してくれている二宮くんの表情はどんどん曇っていき、彼はとうとう眉間に深い皺を刻んだ。


「……わかりました。いえ……こちらのミスですので、それだけでも充分です。はい、ご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません。すぐに私が取りに伺います」


お礼を言って電話を切った二宮くんに、注目が集まる。
私も縋るような気持ちで彼を見つめると、程なくして「すみません」と落胆混じりの声音が落とされてしまった。



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