溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「あ、あの、本当に──」

「謝らなくてもいい」


エレベーターに飛び乗った直後に切り出すと、穂積課長は腕時計を確認してから私を見た。
真っ直ぐな双眸を向けられて、言葉が出てこない。


優しい言葉を掛けてもらえるのかもしれない、なんて一瞬でも考えてしまったけれど、目の前の瞳がそうじゃないことを語っている。
それが当たり前なのに、心のどこかで課長に対して甘えがあった自分自身に気づいて、僅かでもそんな考えが脳裏に過ったことがとても情けなかった。


「俺に謝罪しても、仕方ないだろう。今回の件は初歩的なミスだし、庇う余地はない。でも、そのミスを責めても解決はしないし、サンプルの確保もできない」


プライベートの時のような話し方だからか、叱られているわけじゃないことはわかるのに、叱られている時よりもずっと心が痛かった。
唇を噛みしめ、握った拳に力を込める。


「研究所に着いたら、必死に頭を下げるんだ」


穂積課長は淡々と告げると、エレベーターから降りた。
私は、必死に涙を零さないようにしながら、課長の後を追った。

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