溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
程なくして、正面から最大なため息が落とされた。
それが好意的な感触じゃないのは明白で、もうここではどうすることもできないんだと悟る。


「わかった……」


ところが、松村部長は小さくそう言った。
慌てて松村部長を見ると、隣にいる穂積課長も同じく頭を上げていた。


「穂積くんには負けるよ」

「松村部長……」

「だいたい、部下のために必死な君の頼みを断れば、私が嫌な上司みたいじゃないか」


驚嘆混じりの声を漏らした課長に、松村部長が冗談めかしたように笑った。
そのあとで、部長が「今回だけだよ」と告げた。


「うちにあるサンプルをそちらに回そう。ただし、早急に工場からこちらの分も手配してくれ。それが条件だ」

「もちろんです! 工場の方には私が責任を持って話を通しておきます!」

「あぁ、そうしてくれるなら、こちらのことは私がなんとかしよう」

「え?」


穂積課長が小首を傾げると、松村部長が苦笑を浮かべた。

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