溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
最寄り駅に着いた私は、何度かためらったあとで、穂積課長に電話を掛けた。
直後、コール音が響いたかと思うと、すぐに『はい』と低い声が聞こえてきた。
「あっ、あの……! 青山です!」
『あぁ』
「課長、今どちらにいらっしゃいますか?」
思っていたよりも早い反応に、心の準備が追いつかなかったせいで、謝罪やお礼よりも先に課長の所在を訊いてしまっていた。
だけど、今は不躾だということにも気づけないくらい必死だった。
『莉緒こそ、今どこにいるんだ?』
鼓膜をくすぐる、〝莉緒〟という声。
優しい声音と名前で呼んでもらえたことに、なんだか弱っている心がそっと揺すぶられるようで、視界が滲んでしまいそうになる。
それをこらえながら、口を開いた。
「えっと、私はもうすぐ家に着くんですけど……」
『そうか。じゃあ、ちょうどいいな』
紡ごうとしていた『会えませんか?』という質問は、穂積課長の言葉によって飲み込んでしまう。
なにが〝ちょうどいい〟のかはわからないのに、私は頭で考えるよりも先に走り出していた。
直後、コール音が響いたかと思うと、すぐに『はい』と低い声が聞こえてきた。
「あっ、あの……! 青山です!」
『あぁ』
「課長、今どちらにいらっしゃいますか?」
思っていたよりも早い反応に、心の準備が追いつかなかったせいで、謝罪やお礼よりも先に課長の所在を訊いてしまっていた。
だけど、今は不躾だということにも気づけないくらい必死だった。
『莉緒こそ、今どこにいるんだ?』
鼓膜をくすぐる、〝莉緒〟という声。
優しい声音と名前で呼んでもらえたことに、なんだか弱っている心がそっと揺すぶられるようで、視界が滲んでしまいそうになる。
それをこらえながら、口を開いた。
「えっと、私はもうすぐ家に着くんですけど……」
『そうか。じゃあ、ちょうどいいな』
紡ごうとしていた『会えませんか?』という質問は、穂積課長の言葉によって飲み込んでしまう。
なにが〝ちょうどいい〟のかはわからないのに、私は頭で考えるよりも先に走り出していた。