溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「課長……!」


アパートの前に見えた人影の正体を確認した瞬間、切れる息の合間に穂積課長のことを呼んでいた。
駆け寄った私の肩は、大きく揺れている。


「おかえり」


街灯の下にいる課長の表情は、逆光のせいでよくわからない。
だけど、穏やかな声色から伝わってきた優しさに、なんだか泣きそうになってしまった。


「あの……課長、今回は本当に――」

「莉緒」


頭を下げかけた私の耳に届いたのは、柔和な声。
こんなにも優しく名前を呼んでもらえることが嬉しくて、こらえた涙が溢れてしまいそうになる。


「はい」

「一杯飲まないか?」


そんな気持ちを隠していた私に、穂積課長はふわりと微笑み、コンビニのビニール袋を見せてきた。
半透明の袋越しに見えるのは、何本かの缶だった。


「え?」

「莉緒と一杯やろうと思って。月曜日だけど、こういう時くらいはいいだろ?」


課長がなにを考えているのか、わからない。
それでも、向けられた笑顔に胸がきゅうっとなって、それを隠すように視線を伏せながら小さく頷いた。

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