溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
穂積課長が調達してきてくれたアルコールは、レモンサワーばかりだった。
様々なメーカーのものが用意されてはいるものの、すべてがレモンサワーであることを不思議に思っていると、課長が私の考えていることを見透かすように「莉緒はこれだろ」と笑った。


私の好きなものを知ってくれていることには驚きを隠せなかったけれど、なによりも穂積課長の気遣いが嬉しかった。
会いに来てくれただけでも充分なのに、こうして思いやってくれていることがわかる行動に目頭がジンと熱くなる。


ただ、今は笑顔でお礼を言いたくて、精一杯口角を上げてから「ありがとうございます」と零した。
課長は瞳をそっと緩めたあと、口を開いた。


「疲れた時は、とりあえず好きなもので体を満たしてあげればいい。そうすれば、心もすぐに元気になるから」


優しい声で落とされた言葉に鼻の奥がツンと痛んだけれど、「ほら」と渡されたグラスを受け取って、レモンサワーで乾杯をした。

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