溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「どうせなら恋人のやり方で慰めるか」


本当に泣いてもいいのかわからなくて涙を堪え続けていた私を前に、穂積課長は不意にぽつりと零した。
その言葉の意味を理解するよりも早く、肩を抱き寄せられたかと思うと、気づいた時には課長の腕の中にいた。


「え……？　課長……」

「これなら、顔は見えない。だから、もう泣いてもいい」


耳元で「ずっと我慢していたんだろう」と紡がれ、見透かされていたことに驚くよりも先に、瞳から大粒の雫が零れた。
雨粒が落ちる瞬間のような音が、続けて耳に届く。


漏れそうになった嗚咽を隠すように、咄嗟に唇を噛みしめたけれど……。
一度決壊した涙腺を、自分ではどうすることもできなかった。


「……っ」


この数日、ずっと堪えていた涙は、思っていたよりも多かったみたい。
あとからあとから零れては、穂積課長のシャツを無遠慮に濡らしてしまう。


止めようとしても止まらなくて、温もりに包まれた体は鼻をすする度に小さく揺れる。
静かな部屋には、私の泣き声が落ちていった。


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