溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「え？　あ、あぁ……うん、大丈夫だよ」


二宮くんはハッとしたように笑うと、小さく頷いてくれた。
多恵が呆れ混じりの眼差しで彼を見遣ると、なにか言いたげにため息をついた。


「それにしても、ずっと恋愛がご無沙汰だった莉緒の相手が課長とはねー。この際、付き合うようになった理由も教えてよ」

「えぇっ……！　それは、ちょっと……！」


まさか、始まり方があんな形だったなんて言えるはずがない。
彼女にはいずれ聞いてほしいという気持ちはあるけれど、少なくともそれは今じゃなかった。


「隠さなくてもいいじゃない」

「隠すっていうか……なんだか恥ずかしいし……！　と、とにかく、またそのうち話すから！」


多恵の尋問が始まる前に席を立ち、「ちょっとトイレ！」と言い訳をして逃げた。
「戻ってきたら訊くからねー！」と飛んできた声は聞こえない振りをして、たくさんのお客さんで賑わう店内の奥を目指す。
このままだと彼女からの質問が待ち受けていそうだったから、あえて少しだけゆっくりしてから戻ることにした。