溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
結局、申し訳なさそうな二宮くんが折れてくれる形で、私はようやくふたりにお礼をすることができた。
何度も「ありがとう」と言う私に、彼が戸惑うように苦笑を零す。


「それは俺たちのセリフだから」

「そうよ、莉緒」

「ううん。私はきっと、ふたりがいてくれなかったら落ち込んだままだったし、会社に行く勇気も出なかったと思うから。こんなことしかできないけどね」

「なに言ってるの、充分よ」

「うん、そうだよ」


それから、口々にお礼を言ってくれたふたりに促され、笑顔で歩き出した。
厳しい寒さの中で歩く駅までの道のりで体は冷え切ってしまったけれど、心はとても温かくなっていた。


「じゃあ、ここで。莉緒、ご馳走さま」

「莉緒ちゃん、今日は本当にご馳走さま。ふたりとも気をつけて」

「うん。またね」


私たちの声は、人がまだ多い駅構内の喧騒によってすぐにかき消されてしまう。
もう一度お互いに声を掛け合い、それぞれ別の方面へと足を踏み出した――。

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