溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

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自宅の最寄り駅に着いて改札を抜けると、その先に見覚えのある姿を捉えて目を丸くする。
慌てて走り寄ろうとした私に、苦笑が向けられた。


「穂積課長……! どうしてここに?」

「理由なんてひとつしかないだろ。それより、莉緒を捕まえるのは、なかなか骨が折れるな」


どういう意味かわからなくて小首を傾げれば、「連絡したんだけど」と肩を竦められてしまった。
慌ててスマホを取り出して確認すると、穂積課長から着信とメッセージが数件きていた。


「すみません……!」

「風呂でも入ってるのかと思って家に行ったけど、いないみたいだったから。ここで待ってた方が確実かと思って」


課長は怒っているわけじゃないけれど、私は青ざめてしまいそうだった。
着信履歴はもう一時間半も前のもので、メッセージに至ってはそれよりもさらに早い時間に送られてきていたから。


「本当にすみません」

「別にいいよ。約束してなかったし、俺が勝手に待ってただけだから」


そう言ってもらえても、連絡に気づかなかった自身の落ち度に申し訳なさが膨らむばかりだった。

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