溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「緊張してる？」


見透かされているはずのことを尋ねられて、視線が泳いでしまう。
彷徨わせた瞳は行き場を見つけられないまま、二脚のダイニングチェアーのところで留まった。


「こ、ここって……前の彼女さんと住んでたんですか？」

「え？」


穂積課長から怪訝そうな声が零されたことで、切り出す内容を間違ってしまったと悟る。
だけど、今更引けなくて、次に紡ぐ言葉を考えるよりも先に口を開いた。


「あっ、その……ソファーはひとり暮らしにしては大きいし、ダイニングチェアーが二脚あったり、２LDKだったりって、誰かと暮らしてたのかなって」


我ながら、なんともお粗末な推理だな、と思う。
しかも、自分が口にした話題で胸の奥がほんの少しだけ痛んだなんて、ますますマヌケでしかない。


ソファーはゆとりが欲しかっただけで、テーブルとセットのダイニングチェアーはもともと二脚付いていたのかもしれないし、来客用ということだってある。
間取りだって、オンオフをきっちり分けたいと言った課長なら、別に不思議なことじゃないはずだ。


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