溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「ほら、早く」
「えっ、え……?」
唐突に寄越されたお願いに、戸惑いと困惑がない交ぜになる。
私の中の穂積課長は、恋人という関係性になっても〝課長〟のままで、まだ名前で呼ぶという考えにも至っていなかったから。
「莉緒」
だけど、こういう時の穂積課長は、まったく容赦がない。
余裕そうな瞳がゆるりと悪戯混じりの弧を描き、骨張った手が私の頬をスルッと撫でた。
「名前、呼んでよ?」
首を軽く傾げられて、ゆったりとした仕草で微笑まれて。わずかに上げた唇が、甘い声音で「莉緒」と紡ぐ。
「まさか、俺の名前を知らない……とか?」
「い、いえ……っ、知ってます! 知ってます、けど……」
訝しげに寄せられた眉にハッとして、慌てて首を小さく横に振る。
課長の手は相変わらず私の頬に添えられたままで、触れ合っているところが少しだけくすぐったくなった。
「じゃあ、呼んでよ」
諭すような口調が、鼓膜を揺さぶる。
私は、ドキドキと騒ぐ拍動を押さえるように胸元に手を当て、おずおずと口を開いた。
「えっ、え……?」
唐突に寄越されたお願いに、戸惑いと困惑がない交ぜになる。
私の中の穂積課長は、恋人という関係性になっても〝課長〟のままで、まだ名前で呼ぶという考えにも至っていなかったから。
「莉緒」
だけど、こういう時の穂積課長は、まったく容赦がない。
余裕そうな瞳がゆるりと悪戯混じりの弧を描き、骨張った手が私の頬をスルッと撫でた。
「名前、呼んでよ?」
首を軽く傾げられて、ゆったりとした仕草で微笑まれて。わずかに上げた唇が、甘い声音で「莉緒」と紡ぐ。
「まさか、俺の名前を知らない……とか?」
「い、いえ……っ、知ってます! 知ってます、けど……」
訝しげに寄せられた眉にハッとして、慌てて首を小さく横に振る。
課長の手は相変わらず私の頬に添えられたままで、触れ合っているところが少しだけくすぐったくなった。
「じゃあ、呼んでよ」
諭すような口調が、鼓膜を揺さぶる。
私は、ドキドキと騒ぐ拍動を押さえるように胸元に手を当て、おずおずと口を開いた。