溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】
「そういえば、知ってる? うちの社長、去年の秋に倒れたんだって」

「えっ、そうなの?」

「大事には至らなかったみたいだけど、その時はトップシークレット扱いだったのよ。一部の重役と社長と副社長付きの秘書しか知らなかったみたいで、私も最近になってようやく秘書室長から聞かされたの」


唐突に変わった話題に、まったく興味がなかったわけじゃない。
社長の体調次第では会社に影響があるかもしれないし、そうなればこれまで通りとはいかなくなるかもしれない。


とはいえ、所詮は雲の上の人。
会社に影響があるわけでもない今の段階では、私にとってはどこか他人事だった。


春日野(かすがの)社長はまだ還暦すぎだけど、後継者問題とかこれから出てきそうだよね。ほら、うちの社長って今は離婚して、子どももいないじゃない?」

「うーん……。副社長が引き継ぐんじゃないの?」


私の言葉に、多恵が眉をひそめる。
程なくして、彼女はどこか迷いがちな顔つきになり、言いにくそうに口を開いた。

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